Xミッション (2人の死んだ男の物語)

突然予定が空いたので、朝一番からXミッションを鑑賞してきた。そのことについて書きたいと思う。ネタバレが含まれるかもしれないので、まだ見ていない方やこれから見る予定の方は気をつけてください。












予告や公式ホームページでは「CGなしのアクション」と銘打たれ、それがどうやらこの映画の見所らしいという情報のみを入れて、鑑賞に臨んだ。
一言で言うとすごく面白かった。CGでは成し得ない雪の飛び散り方やスタントマンからの目線をふんだんに入れ、寒気がするような急斜面を滑り降りたり、目も眩むような崖をロッククライミングする。地元の映画館には2Dと3Dしかなく、IMAXで見られないのが非常に残念だった。もし、このブログを読んでいらっしゃる方で近くにIMAXがある映画館の近くにお住まいの方はぜひそれで鑑賞して頂きたい。
派手なアクションや電波な会話に気を取られがちになるが、この映画は理想を追い求め肉体的に死んだ男と理想を追い求めることが出来なくなり精神的に死んだ男の復活を描いた映画である。ボディが目指す「オザキ8」という思想だが、ボディはその思想が捕鯨船(暴力とも言い換えることができる)に負けたことを眼の前で見ていた人物だ。思想よりも暴力が強いということを眼の前でまざまざと見せつけられたことが彼の心にひっかかり、この無謀なオザキ8への挑戦へと繋がっている。ジョニーとヒロインであるサムサラの「思想は強い」「捕鯨船の方が強い」という会話からも思想より暴力に負けたことという事実が彼らに何かきっかけを与えたということがわかる。一方、ジョニーは無謀の果ては、どのような結果に繋がるかをよく知る人物である。ボディはオザキが死ぬことで無謀な挑戦をするきっかけを得るが、ジョニーは友達の死で無謀な挑戦をやめるきっかけを得る。ジョニーは今までの全てを捨て、厳格な規律と退屈なFBIに入るのだ。始まりからもわかるのだが、2人は終始正反対の場所にいるように思えた。その2人を繋ぐものがこの映画の見所でもある「エクストリームスポーツ」だ。私はエクストリームスポーツの経験も無く、スカイダイビングの経験すらない。高所恐怖症であるし、ロッククライミングなんてもってのほかだ。だから、いまいちエクストリームスポーツをしている側の良さというものが汲み取れなかった。だから、ジョニーとボディを繋ぐものが「エクストリームスポーツをすることで得られる何か」という非常に曖昧で薄い感想になることを許して頂きたい。分からない。2人を突き動かす感情の名前が私にはよくわからない。それがよく分かる方はもっと楽しめるのではないだろうか。ただその熱量というものはこちらにもひしひしと伝わってくる。この2人はお互いにお互いを救いたいと思っていた。ボディは友人の死で死んでしまったジョニーの心を、ジョニーはいつか谷底に落ち、波の狭間で死ぬであろうボディ自身を。谷底に落ちるボディを追いかけて飛び降りた場面から、ジョニーの本気がわかるはずだ。結論から言えば、ジョニーはボディを救えなかった。ボディはジョニーを助けたため、達成することが出来なかった波の修練を最後に死ぬ。彼は文字通り自然と一体になり、オザキ8を成し遂げた。そして、ボディの死はジョニーが再びエクストリームスポーツを再開するきっかけを与え、彼はラストで雪山の急斜面を滑り降りていった。
面白いと思う。ただストーリー重視の映画ではないので、チグハグで無理やりだなぁと思うところはある。オザキ8の思想や、それを達成するごとに犯罪を犯したり、挙句には人まで殺す。そこに文句を言うのは、ナンセンスだと感じるので、私は言わない。
この映画はエクストリームスポーツを見せることに主題が置かれているので、頭を真っ白にしてひたすらアドレナリンを出したい方はぜひ見て頂きたい。